韓国映画「パラサイト」のレビューです。
ー作品情報ー
作品名：パラサイト（原題：기생충（寄生虫））
公開年（日本）：2019年
製作国：韓国
監督：ポン・ジュノ
メインキャスト：チョ・ヨジョン、パク・ソダム、チェ・ウシク
あらすじ
キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。
感想
アカデミー作品賞、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞など、
多くの賞を受賞しているだけあって面白く、それでいて深い作品。
隣国にも関わらず知らなかった、韓国の「超格差社会」や「競争社会」といった社会問題について知るきっかけとなった。
日本も似たようなものだが、韓国は日本以上に厳しいのかもしれない。
物語は、キム家の長男・ギウが友人から「自分が留学中、パク家長女の家庭教師を代わってくれないか」とお願いされるところから始まる。
ギウは浪人中で一旦は断るが、引き受ける決断をする。
そこで美大志望の妹・ギジュンに延世大学の在学証明書を偽造してもらう。
パク家の妻に嘘をつき、家庭教師の職を得たギウ。
その後も一家は巧みに騙しつつ、ついにキム家全員がパク家で働くことになる。
家庭教師（英語、美術）、専属運転手、家政婦。
もちろん自分たちが家族であることは秘密である。
「金持ちなのに、純粋で優しい」ではなく、
「金持ちだから、純粋でひねくれていないんだ」というセリフが印象的である。
とにかくパク家の妻は、何も疑うことなく何事もすんなりと受け入れてしまう。
がめつく仕事を奪っていくキム家と、温和なパク家の違いである。
この作品は、「縦の構図」を用いて描かれているのが特徴である。
- 家族全員が失業中で、半地下に住むキム一家
- IT社長で、高い丘の上に住むパク一家
これら２つの対照的ともいえる家族の格差は、縦の構図、つまり高低差で表現されている。
例えば大雨の時。
キム家がパク家から走り逃げ出すシーンがあるのだが、外は大雨である。
そんな中、高い丘の上から長い階段をびしょ濡れになりながら必死に下っていく。
半地下の家に到着すると家中浸水しており、便器から泥水があふれ出ている。
パク家の豪邸にも地下が設けられており（なんと住む本人たちは知らない）、ここでも同じ表現方法がみられる。
どうやらキム家が住む「半地下」は本当に存在するようだ。
作品の中で、パク家の長男・ダソンが「みんな同じにおいがする」という。
半地下には特有のにおいがあり、それは貧困家庭の象徴ということである。
そのほかにも、服装、話し方、言葉の使い方など２つの家族での違いが分かる。
これまでで、構図を意識して観た映画はパラサイトが初めてかもしれない。
とにかく表現の仕方や見せ方、映像のきれいさが素晴らしいと思う。
話の内容は社会問題がテーマなだけにダークだが、
とはいえ、たびたび出てくる変な英語はコメディの要素を感じるし、日本のカニかまぼこや美味しそうなジャージャーラーメンも登場する。
見るたびに新たな発見がありそうな作品である。
